第一章 18、「天浮橋」の場所
第一章 琵琶湖畔と富士山麓にあった最初の都
18、「天浮橋」の場所
『ホツマ』によれば、伊佐奈木と伊佐奈実は、ウキハシの上で探って得た自凝島に宮を造り、万物を生成したということである。
では、二人が自凝島こと沼島を見つけた「ウキハシ」とはどこであろうか。
ウキハシは、記紀と『旧』では「天浮橋」と表されている。よって、ウキハシ=浮橋であり、その意味は、文字どおりに受け取れば、“浮いている橋”である。
しかしこの場合は、“浮いている橋のようなもの”ということかと思われる。そう考えると、沼島の近くにちょうどそれらしき所がある。淡路島の南にある諭鶴羽山地である。高さ約六〇〇メートル、幅約七キロメートル、長さ約二三キロメートルに及ぶ東西に長い尾根が「浮橋」の正体ではなかろうか。地理的に見ても、素阿波の素佐(紀伊半島南部)と阿波(四国)を繋ぐ、まさしく橋である。
諭鶴羽山地で最も高く、淡路島の最高峰でもある諭鶴羽山(標高約六〇八メートル)からほぼ真南を見れば沼島が見え、その先に伊島が見える。山頂近くには【諭鶴羽神社】が存在することからも、この山が古代の重要な場所であることは間違いない。
この二人が関わった伊佐奈実の縁談に関しては、『ホツマ』に次のような記述がある。「ウキハシオ ハヤタマノオガ ワタシテモ トケヌオモムキ トキムスブ コトサカノオゾ〔浮橋をハヤタマノオが渡しても解けぬ趣、解き結ぶコトサカノオぞ〕」――つまり、ハヤタマノオが橋渡しをしても相手に了解されない様子だったが、コトサカノオが了解を得て両者を結んだので“コトサカノオ”なのだ、という文意である。コトサカノオは『紀』と『旧』では「泉津事解之男」という名で登場するので、コトサカノオ=事解之男、ハヤタマノオは『紀』では「速玉之男」と表され、『旧』では「日速玉之男」の名で登場するので、ハヤタマノオ=速玉之男である。
(2018/3/7最終更新)