羽生雅の『ホツマツタヱ』考~~神社と神代史の謎解き

『ホツマツタヱ』から明らかにする記紀と神社、歴史の真実

第一章 5、八つの国と、八元神と、東西南北の関係

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第一章 琵琶湖畔と富士山麓にあった最初の都
 
 
 
5、八つの国と、八元神と、東西南北の関係
 
 
 
 ではここで、トホカミヱヒタメの兄弟と八方の国の関係について考察してみよう。
 
 先にも述べたように、彼らは御中主が生んで各地に配置した人々を統治したあと、「八元神」として神格化され、季節や方角を司る神とされた。改めてそれぞれが司る方角を一覧にすれば、次のとおりである。
 
  ヱ元神【北】―――シモツキナカ〔霜月中〕~…………11月中から12月晦
  ヒ元神【南西】――ハツヒ〔初日〕~……………………1月朔から2月中
  タ元神【東】―――キサラキノナカ〔如月の中〕~……2月中から3月晦
  メ元神【北西】――ウツキ〔卯月〕~……………………4月朔から5月中
  ト元神【南】―――サツキナカ〔皐月中〕~……………5月中から6月晦
  ホ元神【北東】――フミ〔文〕~…………………………7月朔から8月中
  カ元神【西】―――ホツキナカ〔葉月中〕~……………8月中から9月晦
  ミ元神【南東】――カミナツキ〔神無月〕~……………10月朔から11月中
 
 ところで、『ホツマ』には「ミシノクニ クロソノツミテ カニアタル〔西の国クロソノツミテ、カにあたる〕」という記述があり、“西”の国であるクロソノツミテはカにあたることが判る。そして前出の表によれば、カ元神は“西”を司る神である。ということは、“西”にあるカの国を治めたカの尊は“西”の神――というように、神として司ることになった方角と生前に統治した国の東西南北の位置は一致すると考えてよい。よって、この考え方に基づいて、八方の国と各国が該当する方角、およびトホカミヱヒタメの八人の尊と、彼らが八元神として司る方角を結び付けていくことにする。
 
 まずは、『ホツマ』に「ヒカシハヤマト ヒタカミモ〔東はヤマト、日高見も〕」とあるので、東を司るタ元神となったタの尊が治めたのは、ヤマトか日高見のどちらかに絞られる。そして、ト元神は南の神とされているが、先述したように、ト元神となったトの尊がいたト下宮は富士山南麓に存在したので、トの国とは富士山を含む国――つまり、のちの東海道の領域であるヤマトのことだ。よって、ヤマトを治めたのがトの尊ならば、タの尊が治めたのはおのずとヤマト以外の東の国――すなわち日高見ということになる。
 
 ゆえに、
 
  ヤマト(関東・南中部)――――「東」の国…「ト」の尊―「南」の「ト」元神
  日高見(東北)――――――――「東」の国…「タ」の尊―「東」の「タ」元神
 
 である。
 
 次に、淡海を治めたヱの尊は北を司るヱ元神なので、すなわち、
 
 淡海安曇(滋賀県)――――――「中央」の国…「ヱ」の尊―「北」の「ヱ」元神
 
 である。
 
 ところで、北のヤマトと細矛・千足は八方では北とされているが、前述の結論から、八方で中央とされている淡海安曇を北として考えると、淡海安曇から見て東にある北のヤマトが“北”の国(淡海安曇)の“東”側なので“北東”、淡海安曇から見て西にある細矛・千足が“北”の国(淡海安曇)の“西”側なので“北西”ということになろう。
 
 ゆえに、
 
  北のヤマト(北中部)―――――「北」の国…「ホ」の尊―「北東」の「ホ」元神
  細矛・千足(山陰)――――――「北」の国…「メ」の尊―「北西」の「メ」元神
 
 である。
 
 残る三つの八元神が守護する方角――西、南西、南東を、残る三つの八方の国――西の月隅と葦原、南の阿波・素佐に、この三国の位置関係に基づいてあてはめると、次のようになる。
 
  葦原(近畿+山陽)――――――「西」の国…「カ」の尊―「西」の「カ」元神
  月隅(九州)―――――――――「西」の国…「ヒ」の尊―「南西」の「ヒ」元神
  阿波・素佐(四国+和歌山県)―「南」の国…「ミ」の尊―「南東」の「ミ」元神
 
 ということで、難をいえば、ヤマトが南で阿波・素佐が南東という点だが、ヤマトを治めたトの尊が南を司る神であることは確定事項で動かせないので、やむをえない。八方で南とされる国の東側と西側という認識なのかもしれない。
 
 以上をまとめると、八方の国と各国が該当する方角、およびトホカミヱヒタメの八人の尊と、彼らが八元神として守る方角の関係は、次のようになる。
 
  淡海安曇(滋賀県)―――――「中央」の国…「ヱ」の尊―「北 」の「ヱ」元神
  月隅(九州)―――――――――「西」の国…「ヒ」の尊―「南西」の「ヒ」元神
  日高見(東北)――――――――「東」の国…「タ」の尊―「東 」の「タ」元神
  細矛・千足(山陰)――――――「北」の国…「メ」の尊―「北西」の「メ」元神
  ヤマト(関東・南中部)――――「東」の国…「ト」の尊―「南 」の「ト」元神
  北のヤマト(北中部)―――――「北」の国…「ホ」の尊―「北東」の「ホ」元神
  葦原(近畿・山陽)――――――「西」の国…「カ」の尊―「西 」の「カ」元神
  阿波・素佐(四国+和歌山県)―「南」の国…「ミ」の尊―「南東」の「ミ」元神
 
(2018/3/5最終更新)