羽生雅の『ホツマツタヱ』考~~神社と神代史の謎解き

『ホツマツタヱ』から明らかにする記紀と神社、歴史の真実

第一章 6、東のトコタチ「タカミムスビ」――中央と地方

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第一章 琵琶湖畔と富士山麓にあった最初の都
 
 
 
6、東のトコタチ「タカミムスビ」――中央と地方
 
 
 
 六代天君――面足・惶根夫妻の統治は八方に及んだが、この夫婦にはツギコ〔嗣子〕がなかったので、次第に常世の道の教えが衰えて、世の中が乱れはじめた。そこで、当時八方の東の国である日高見を治め、「ヒガシノキミ〔東の君〕」と呼ばれていたタマキネ=トヨウケの娘――イサコと、八方の北の国である北のヤマトのシラヤマ〔白山〕(現・白山)から千足にかけてを治めていたアワナギの息子――タカヒトを娶せて、天君の跡を継がせることになった。
 
 国常立の八下り子が八方に下って国を治めて以降、八方にはそれぞれ地元で民を統べる国神(国君)がいた。その代表的な存在が日高見を治める「ミムスビ」であり、初代がタカミムスビで、トヨウケはそのヰツヨカミ〔五代神〕なので、「ヰツヨノミムスビ〔五代のミムスビ〕」である。あとで説明するが、トヨウケを漢字で表せば「豊受」で、「トヨケ」とも呼ばれ、『記』には「登由気神」の表記で登場する。
 
 ミムスビの祖であるタカミムスビは、『記』では「高御産巣日神」、『紀』では「高皇産霊尊」、『旧』では「高魂尊」と表されている。高御産巣日=高皇産霊=高魂で、いずれも「タカミムスビ」と読むが、いろいろあると混乱するので、本編での漢字表記は「高皇産霊」とする。よって、ミムスビ=皇産霊である。
 
 『ホツマ』によれば、高皇産霊は、タカマに御中主を祀った葉木国の神の子――とのことである。葉木国の神は、トヨクンヌの説明のところでも述べたように、常世神の子なので、常世神こと“常世”国の長である国常立の八下り子の一人だ。そして、先の考察によれば、東の日高見は、東を司るタ元神となったタの尊が治めたタの国のことなので、高皇産霊を生んだ葉木国の神とは、タの国を治めたタの国狭立ということになる。つまり、タの国狭立の子である高皇産霊とは、タのトヨクンヌに他ならない。タのトヨクンヌである高皇産霊は葉木国に坐す神なので、父と同じく「葉木国野尊」と呼ばれたのだろう。
 
 また、高皇産霊については、『ホツマ』に「キノトコタチ」と讃えられた――とも書かれている。キノトコタチの「キ」は東、「トコタチ」は国常立の「常立」と同じなので、漢字で表せば「東の常立」である。そして、「国常立」とは“脈々と続いていく恒常の国を立てた(=建てた)”というような意味だろうから、東に中央と同じ恒常の国を立てたのが高皇産霊ということである。“東”の国で初代天神の国“常立”と同等に思われ敬われていたから、“東国における国常立”という意味で「東の常立」と讃えられたのだ。
 
 高皇産霊の子孫については、豊受をはじめとする代々の皇産霊は日高見を治めたが、高皇産霊の子の一人であるアメカガミカミは西のチクシ〔筑紫〕を治め、アメカガミカミの子であるアメヨロツカミは南のソアサ〔素阿佐〕(阿波・素佐)を治め、同じくアメカガミカミの子である大漬瓊は天君となり、そしてアメヨロツカミの子であるアワナギは北の国である北のヤマトの白山から千足までを治めたとある。アメカガミカミは『紀』と『旧』に「天鏡尊」、アメヨロツカミは『紀』に「天万尊」の表記で登場する。よって以後は、アメカガミカミ=天鏡神、アメヨロツカミ=天万神とする。
 
 葉木国の神から続く高皇産霊の系譜を書けば、次のとおりである。
 
  タ国狭立―①高皇産霊―――②☆――③☆――④☆―――⑤豊受――――イサコ
 (葉木国の神) (葉木国野尊) |                      ⇓
 【日高見】(東の常立)  |                       ⇓
              ―――天鏡神――天万神――アワナギ―タカヒト ⇓
                【筑紫】|【素阿佐】【北のヤマト   ⇓  ⇓
                    |      /細矛・千足】 ⇓  ⇓
                    |              ⇓  ⇓
                     ―大漬瓊―角杙―面足…イサナギ ⇓
                       ∥   ∥  ∥    ∥  ⇓
                      小漬  活杙 惶根   イサナミ
 
(2018/3/5最終更新)